テンジクダイ科の分類 | 魚のブログ

テンジクダイ科の分類

近いうちテンジクダイ科について書こうと思っている。テンジクダイ科の分類は2013年に出た「日本産魚類検索第三版」(以下、魚類検索、と略する)からだいぶ変わってしまっているのでここでちょっとまとめてみたい。

魚類検索でのテンジクダイ科の分類

テンジクダイ亜科と、クダリボウズギス亜科の2亜科に分けられている。後者にはクダリボウズギス属、クダリボウズギスモドキ属、ヌメリテンジクダイ属の3属が含まれ、前者にはその他の属(日本産ではサクラテンジクダイ属、ヒカリイシモチ属、マンジュウイシモチ属、オニイシモチ属、ヤライイシモチ属、シボリ属、タイワンマトイシモチ属、ナンヨウマトイシモチ属、ヤツトゲテンジクダイ属、スカシテンジクダイ属、アトヒキテンジクダイ属、テンジクダイ属、イトヒキテンジクダイ属、カクレテンジクダイ属、ナミダテンジクダイ属)が含まれる。

馬渕ほか(2015)の分類体系

オニイシモチ亜科

テンジクダイ科は4つの亜科に分けられた。魚類検索ではテンジクダイ亜科のメンバーであったオニイシモチが、独立した亜科オニイシモチ亜科を形成することになった。其々1種のみを含むオニイシモチ属と、Holapogon属の2属からなる。なおオニイシモチに従来使用されていた属の学名Coranthusは、Amioidesの新参異名となって消えているようだ。この種は底釣りでたまに釣れるようであるが稀な種である。奄美大島や慶良間諸島で採集されているが、この論文が掲載されている魚雑の表紙には鹿児島県硫黄島でダイバーによって撮影された画像が掲載されている。

Paxton亜科

2つ目の亜科は、Paxton亜科である。Paxton属に含まれる1種のみからなる。細身の体で、背鰭が1基しかないように見える。ヌメリテンジクダイの背鰭を一つにしたような感じの種類で、従来はクダリボウズギス亜科に含まれていたもの。オーストラリア産で日本には産しない。

ヌメリテンジクダイ亜科

3つ目の亜科は、ヌメリテンジクダイ亜科である。従来のクダリボウズギス亜科の、ヌメリテンジクダイ属のみが含まれる亜科で、クダリボウズギス属や、クダリボウズギスモドキ属は含まれない。7種がいるようだ。

コミナトテンジクダイ亜科

4つめの亜科はコミナトテンジクダイ亜科で、上記のものを除いたすべての種が含まれる。普通であればこれをテンジクダイ亜科とするところであろうが、「テンジクダイ」や「イシモチ」の語幹はオニイシモチ亜科やヌメリテンジクダイ亜科でも見られるということで使用されなかったようだ。
この論文ではいくつもの分類階級に新しい標準和名が提唱されている。その標準和名提唱についてはいくつかのルールを策定しているが、それに合致しなかったということだ。

ナンヨウマトイシモチ族

6属を含む。日本産のものはナンヨウマトイシモチ属、タイワンマトイシモチ属、シボリ属、ヤツトゲテンジクダイ属の計4属が含まれる。ややごつい体をして、保護色・模様を持つものが多いような気がする。

コミナトテンジクダイ族

5属からなり、日本産はApogon属、Zapogon属の2属。魚類検索でテンジクダイ属とされていたアカネテンジクダイ、ハナイシモチ、ヤミテンジクダイ、トゲナガイシモチ、ヤリイシモチ、アカフジテンジクダイ、リュウキュウイシモチ、トウマルテンジクダイ、コミナトテンジクダイ、オグロテンジクダイの10種はApogon属に、トマリヒイロテンジクダイがZapogon属に含まれる。Apogon属はこれまでテンジクダイ属の標準和名が与えられていたが、ここで新たに「コミナトテンジクダイ属」という標準和名がつけられた。Zapogon属の標準和名はトマリヒイロテンジクダイ属で、こちらも新しくつけられた。この属のものは赤みを帯びた体のものが多いように思う。

アトヒキテンジクダイ族

Archamia属、Taeniamia属の2属。Archamia属にはアトヒキテンジクダイ属の和名がつけられていたが、これまでArchamia属とされたものは1種(Archamia bleekeri) を除きすべてTaeniamia属に移された。Taeniamia属の和名には、「アトヒキテンジクダイ属」が適用された。一方Archamia属の和名はなし、しかしこの属の唯一の種はインド-西太平洋に産し、近いところでは台湾にも分布することが明らかになっている。恐らく日本でも見つかり和名がつくだろう。

ヤライイシモチ族

ヤライイシモチ属のみ。日本産は4種。多くの種で体側に縦帯があり同定が難しいものが含まれる。大型種で魚をも捕食するが、飼育すると意外にも繊細な面を見せる。

カガミテンジクダイ族

Yarica属と、Glossamia属の2属からなる。魚類検索でテンジクダイ属とされていたカガミテンジクダイはYarica属に含まれた。Yarica属の標準和名は、カガミテンジクダイ属が新しく提唱されている。

Glossamia属は、11種が知られているが日本には分布していない。一番よく知られているのはGlossamia aprionという種で、この種はニューギニアからオーストラリアにかけて分布し、日本にも輸入されているのである。この種を飼育したことはないが、いつか飼育してみたいと思っている魚だ。

クダリボウズギス族

4属からなる。日本に分布するものではサクラテンジクダイ属と、魚類検索ではテンジクダイ亜科とは別亜科にされていたクダリボウズギス属、クダリボウズギスモドキ属の3属が含まれる。サクラテンジクダイも、クダリボウズギス属などのものも、頭部に孔器列があるのが特徴のようだ。観賞魚の世界ではまず見ないだろう。

スジイシモチ族

Ostorhinchus属のみ。魚類検索でテンジクダイ属とされていたネオンテンジクダイ、カブラヤテンジクダイ、テッポウイシモチ、ナガレボシ、ヒラテンジクダイ、フウライイシモチ、セホシテンジクダイ、ネンブツダイ、ムナホシイシモチ、フタスジイシモチ、ニセフタスジイシモチ、タスジイシモチ、ミナミフトスジイシモチ、アカホシキンセンイシモチ、ミスジテンジクダイ、ミスジテンジクダイL型、キンセンイシモチ、スジオテンジクダイ、オオスジイシモチ、ウスジマイシモチ、スジイシモチ、コスジイシモチ、アオハナテンジクダイ、アオスジテンジクダイ、クロホシイシモチ、ミヤコイシモチの、計26種が含まれるほか、最近日本から記録されたコンゴウテンジクダイを合わせ計27種が日本から知られる。

この属には本州から九州の夜釣りでおなじみのネンブツダイやクロホシイシモチ、オオスジイシモチなどが含まれ、アクアリストにも人気のキンセンイシモチやネオンテンジクダイも含まれる。すらっとした体形のものが多く含まれているが、ミヤコイシモチのような丸みを帯びた体のものもいる。Ostorhinchus属には新しく「スジイシモチ」という標準和名がついた。

ヒトスジイシモチ族

Pristiapogon属と、Pristicon属の2属。魚類検索でテンジクダイ属のものとされたユカタイシモチ、ヒトスジイシモチ、カスリイシモチの3種はPristiapogon属、アカヒレイシモチ、ミスジアカヒレイシモチ、フタスジアカヒレイシモチの3種はPristicon属。其々にヒトスジイシモチ属、アカヒレイシモチ属という新しい標準和名がつけられている。テンジクダイの仲間でもやや大型になる種が含まれる。

スカシテンジクダイ族

スカシテンジクダイ属のみ。日本産はスカシテンジクダイのみで、クロスジスカシテンジクダイは別の族・属に移された。透明感がある体がとても美しい種類で、水中映像、水中写真では同じように大きな群れを形成するハタンポ科のキンメモドキと同様にお馴染みの種だ。

なおハタンポ科とテンジクダイ科魚類は系統的に近い位置にあるのではないか、とよく思わせる。キンメモドキとスカシテンジクダイは結構間違えられることもあるし、よく群れて夜間に釣れるのも共通している。ただしハタンポ科は背鰭が1基で基底も短い。アオバダイの仲間と近い関係のようだ。

ヒカリイシモチ族

ヒカリイシモチ属のみ。日本には4種が知られている。ヒカリイシモチなど一部の種は観賞魚としてたまに輸入されてくるが、ポピュラーとは言えない。

マンジュウイシモチ族

日本産ではカクレテンジクダイ属、Jaydia属、ナミダテンジクダイ属、マンジュウイシモチ属の4属が含まれる。魚類検索でテンジクダイ属に含められたものでは、テンジクダイ、マトイシモチ、ツマグロイシモチ、シロヘリテンジクダイがJaydia属に、クロイシモチ、ヨコスジイシモチ、モンツキイシモチ属がカクレテンジクダイ属に含まれている。Jaydia属の標準和名は、ツマグロイシモチ属という和名があらたにつけられた。

この族のものは、他のテンジクダイ科の族と比べて体が高く丸っこいような気がする。観賞魚として飼育されているものも多く、タンガニイカ湖のシクリッドの仲間のように、親が口腔内で子育てをするPterapogon属の種バンガイカーディナルフィッシュもこの仲間である。

クロスジスカシテンジクダイ族

クロスジスカシテンジクダイ1種のみを含む、クロスジスカシテンジクダイ属のみが知られる。

イトヒキテンジクダイ族

イトヒキテンジクダイ属と、Fibramia属の2属からなる。

Fibramia属には、魚類検索ではテンジクダイ属のものとされていたアマミイシモチ、サンギルイシモチ、ワキイシモチが含まれている。たしかにこの3種の透明感がある体は、イトヒキテンジクダイ属に近いと思わせる。Fibramia属の標準和名はサンギルイシモチ属。

Lepidamia族

Lepidamia属のみ。インドネシアから南アフリカまでのインド洋に分布する4種を含む。いずれも全長10cmを超える大型種。日本には分布しないとされる。

テンジクダイの仲間はこのように大きく分類が変わっている。魚類検索の「テンジクダイ属」が細分化されたのだと思いきや、他にも大きなところが変わってきている。一番驚きなのはクロスジスカシテンジクダイがスカシテンジクダイ属からわかれたことであった。

これらの分類は分子系統解析に基づいているということであった。それが本当に確実なのかは疑問にも思うが、当分はこれがテンジクダイ科魚類の分類のスタンダードになると思われる。

文献

馬渕浩司・林 公義・Thomas H. Fraser, 2015. テンジクダイ科の新分類体系にもとづく亜科・族・属の標準和名の提唱.魚類学雑誌62(1):29-49.

なお魚類学雑誌は日本魚類学会の学会員向けの雑誌であるが発行から2年過ぎたものは無料でダウンロードできる。

●テンジクダイ科

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