【海底の赤い帯】アカタチ類の見分け方

【海底の赤い帯】アカタチ類の見分け方

船釣りで水深40~100m前後の海底で、タイやアマダイなどをねらった釣りをしていると、赤い帯のような魚が釣れて驚いた方も多いでしょう。

この帯のような魚の正体はアカタチ類です。アカタチ類はちょうどリュウグウノツカイのような細い帯のような形をしていますが、タイやアマダイなどと同じ、スズキ目・スズキ亜目の仲間です。

主に砂泥底、泥底の海底に穴を掘って暮らしています。このような習性は海底に巣穴をほってすむアマダイの仲間と似ており、実際にアカタチ科の魚の中には「~アマダイ」という標準和名の魚もいるのです。

アカタチ科の二つのグループ

アカタチ科魚類には大きく分けてふたつのグループがあります。

1.背鰭と臀鰭が尾鰭とつながっていて、体が細長いもの。

2.背鰭と臀鰭が尾鰭とつながっていないもの。

一般的に「アカタチ」と呼ばれるものは前者です。ただし「アカタチ」の名称は前者のグループにふくまれている、ある魚種の標準和名でもありますので、ここでは「アカタチ類」とします。後者はソコアマダイ類などと呼ばれるもので、アカタチ属ほど多いものではありません。体の形はアカタチなどの帯のような形ではなく、その名前にもあるように寧ろアマダイの仲間などに似ています。

日本産のアカタチ類は2属4種が知られています。

アカタチの仲間の同定

スミツキアカタチ Cepola schlegelii Bleeker, 1854

日本の沿岸では最もよく見られるアカタチ類といえるのがこのスミツキアカタチです。スミツキアカタチは日本で見られる他のアカタチ類と異なり、Cepola属(属の標準和名はスミツキアカタチ属)に含まれます。この属はインド-西太平洋のほか東大西洋や地中海にも分布します。大西洋にはアカタチ科の魚はこの属の魚しかいません。

スミツキアカタチは、イッテンアカタチなどが含まれるアカタチ属と違い、前鰓蓋骨の縁に鋸歯状の棘がありません(青い矢印)。同定に最もよく使われる特徴としては、上顎に小さな黒色の斑です(黒い矢印)。今回の個体はその特徴的な黒色斑が、寄生虫が出す黒い液?で汚れてしまいましたので、お絵かきで勘弁願います。

体側にキラキラした白色斑がありますがこれは個体によって変異もあります。死後もこれは残ります。生きているときは体色も赤色1色かと思いきや黄色い模様があり腹部の色が淡いなど、意外なほどカラフルです。水深50~100mほどの海底に多く見られ、アカタチ属の魚同様に海底の穴の中にいます。日本における本種の分布域は青森県~九州までの各地沿岸で、日本のアカタチの仲間ではもっとも分布域が広いです。写真の個体は京都府沖の日本海産。冷凍してしまったためみすぼらしい色になってしまっていますが、生鮮時は鮮やかな赤色が綺麗です。

イッテンアカタチ Acanthocepola limbata (Valenciennes, 1835)

スミツキアカタチと並んで、日本では最もよく見られるアカタチ類と言えるでしょう。背鰭に黒色斑があるのが特徴です。体側に目立つ模様はないように見えますが、釣り上げたときなどの興奮色なのか、体側に白い帯が出ることがあります。水中写真では、この特徴は見られません。

アカタチ属の魚の特徴は、前鰓蓋骨の後縁に棘があることです(矢印)。この特徴でもスミツキアカタチと区別することが出来ます。

主に水深40~100m前後の海底に生息しています。分布域はスミツキアカタチほどではないですが広く、太平洋岸では相模湾~九州南岸、日本海岸でも富山湾以南の広い範囲に分布します。海外にも韓国や中国などに分布しますが、輸入され観賞魚店でイッテンアカタチという名前で販売されているものは別種であることが多いです。写真の個体は愛媛県宇和海産で沖合底曳網漁業で採集された個体です。

インドアカタチ A. indica (Day, 1888)

背鰭に黒色斑があり(ただし小型個体は明瞭ですが成魚は不明瞭)イッテンアカタチにそっくりですが、体高がやや高く、生鮮時体の後方にだいだい色の細い横帯があります。魚類検索図鑑には水深約300mの砂泥底にすむとありますが、ダイバーによっても本種と思われる個体が写真撮影されています(つまり、ダイバーが撮影できる深さにもいる、ということです)。

日本における分布域は相模湾、宇和海、土佐湾です。海外では台湾、西太平洋やインド洋にも分布します。日本においてはイッテンアカタチやアカタチと比べると明らかに数が少ない、まれな種です。写真の個体は愛媛県宇和海産で、やはり沖合底曳網漁業で漁獲された個体です。

アカタチ A. krusensternii (Temminck and Schlegel, 1845)

日本に分布するアカタチ属の魚の仲間ではこの種だけ背鰭に黒い斑点がありません。体側には小さな黄色やだいだい色の丸い斑紋が並んでいるのが特徴です。

属の標準和名が「アカタチ属」ですから、たくさんいるような雰囲気ですが、イッテンアカタチほど多くはないように感じます。水深40~70m前後の海底で、イッテンアカタチと同じような環境に生息し、同じように底曳網で漁獲されるものです。日本における分布域は新潟県及び相模湾以南の各地で、沖縄にはいないようです。海外では朝鮮半島、台湾、中国からインドネシアにまでみられます。写真の個体は愛媛県宇和海(日振島―嘉島近海)で採集された個体です。

アカタチ類同定のまとめ

アカタチ類を食べる

宇和海では小型のエビやイカの仲間をとる小型の底曳網漁業がありますが、その漁法ではアカタチの仲間もこれらの生き物と一緒に獲れます。残念ながら漁師さんはアカタチ類をあまり利用しないのですが、最近は少なくとも釣り人の間では美味であることがよく知られるようになりました。

小型個体は干物や焼き物、大きい個体は揚げ物やフライなどさまざまな方法で美味しく食べることができるのです。変わった魚だからと、逃がすのはもったいないものです。美味しく食べましょう。

インドアカタチの唐揚げ。奥はツマグロアオメエソの唐揚げ。

その他のアカタチ科魚類

オオソコアマダイ

アカタチ科の魚には先ほど述べましたように2つのタイプがあります。「体が帯状で背鰭・臀鰭・尾鰭がつながっているもの」と「体が帯状でなく、背鰭・臀鰭・尾鰭がつながっていないもの」の2タイプです。

このうち前者は先ほど述べたアカタチ類で、後者は研究者によってOwstoniaPseudocepolaおよびSphenanthiasの計3属にわける意見、あるいは、これら3属をまとめてOwstonia属にするなどの意見がありますが、近年ではこの3属をまとめる意見が多く採用されているように思います。Owstonia属は日本の魚類学の礎を築いた田中茂穂博士の命名によるもので、日本でもおなじみの貿易商人アラン・オーストン氏にちなんだものと思われます。横浜に居を築いたオーストン氏は最近話題となっているミツクリザメMitsukurina owstoniの種小名にもその名前が捧げられています。Owstonia属の和名は、ソコアマダイ属。

最近まで10数種が知られていましたが、昨年新たになんと21種が新種記載され、現在は36種が有効種とされています。日本に分布するのは、アカタチモドキ、オキアマダイ、ソコアマダイ、ソコアマダイモドキ、そして2015年に新種記載されたオオソコアマダイの計5種です。

シェアしてね

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSやってます