「第3の外来種問題 -人工改良品種の野外放流をめぐって-」シンポジウムのメモ的まとめ

「第3の外来種問題 -人工改良品種の野外放流をめぐって-」シンポジウムのメモ的まとめ

▲近畿大学

先週の7月15日には、大阪府・東大阪市の近畿大学の方へシンポジウムに行ってまいりました。

今回のシンポジウムの内容は「第3の外来種問題 -人工改良品種の野外放流をめぐって-」というお題で行われました。「第3の外来種」というのは「人工改良品種」のことで、これは昨年の丁度今ごろ、大阪府の泉佐野市で行われた「キンギョの放流」が話題となったので大阪府内で行われたものであるものと思われます。今回はキンギョの話もでてきましたが、そのほかにもコイやらメダカやらのお話が出てきており、ここでもメモがわりにご紹介したいと思います。

1.国外外来魚、国内外来魚、そして第3の外来魚 (細谷和海さん)

▲第1の外来魚、国外外来魚の代表的な存在であるオオクチバス。

▲第2の外来魚、国内外来魚。スゴモロコは濃尾平野から四国にすむが、琵琶湖産が関東にも移入されている。

▲人工改良品種のキンギョ。水槽で飼育するのならよいが、野に放せば第3の外来魚。

まず、第3の外来魚というのがあるのであれば、第1・第2の外来魚があって当然です。外来魚のうち、「第1の外来魚」は、当然国境をこえてやってくる魚、例えば北米原産のオオクチバス、ブルーギル、ニジマスや、食用として中国から入ってきたソウギョ、ボウフラ退治で入ってきたカダヤシなどに代表される「国外外来魚」です。

しかし外来魚と在来魚を分け隔てるものにおいては国境ではなく、自然分布域の内外を基準に分けようという考え方が最近主流です。それが「国内外来魚」、つまり今回の「第2の外来魚」です。

湖産のアユが日本各地に放されるようになり、それとともに琵琶湖に生息していた他魚も日本各地に移入されて増えてしまったケースや、希少になりつつあるからと、最近あちこちの河川で遺伝的なものなど無視し放流されるタナゴの仲間なども、その中に入るでしょう。

そして今回のメインである、第3の外来魚です。これは人工的に改良された魚や、ほかの魚と交雑されたものも含みます。キンギョ、コイ、ヒメダカなどがそれにあたるのです。

外来魚を屋外にはなつと起こる可能性がある問題は多数あります。

まずは一般的によく知られているような捕食の影響。これは泉佐野のキンギョ放流の際にも「キンギョはブラックバスとちがい在来生物を食い荒らすことはないから問題なっしんぐ」なんておっしゃる方もおりますが、キンギョもフナと同様に雑食性ですので、底生の生き物などを多数捕食します。

次に遺伝的汚染の問題です。遺伝的な問題なんてどうでもいいと思っている方もいますが、雑種不稔など、生物の種の存続にかかわる事態が起こってしまうこともあるのです。

続いて検疫の問題です。いわゆる病気や寄生虫のことですね。12年ほど前に「コイヘルペス」が問題になりましたが、それと同様な問題が放流によって他にも起こる可能性もあります。かつて20年前に入ってきたカワヒバリガイはコイに対する寄生虫を持ち込んだり、アユの冷水病も北米産のギンザケに由来するものではないかともいわれております。

そしてフランケンシュタイン効果です。フランケンシュタイン効果とは、予測できない未知の影響のことです。

たとえばハブ駆除としてマングースを放つということがかつて行われたのですが、昼行性のマングースは夜行性のハブを捕食せずむしろヤンバルクイナなどの昼間にうろつく在来動物を捕食することがわかってきました。ハブを駆除するために入れたマングースのせいでほかの在来生物が希少なものになっています。マングースもようやく駆除が行われヤンバルクイナについてもゆっくりと回復しつつあるようですが、今度は昼夜行動するノネコという外来生物のおかげで生き物が危機にさらされています。このノネコは主に夜間行動するため夜行性のアマミノクロウサギなどの生物を捕食します。このような影響もあるので、他地域の生き物を野に放つ行為は絶対にやめなければなりません

メダカ改良品種による野生集団の遺伝的撹乱 (北川忠生さん)

▲ミナミメダカ

まずおことわり。「メダカ」という魚は今はいませんが、ここではミナミメダカ、キタノメダカの総称として使用します。基本的に2種にわけられているのですが、その他にも多くの遺伝的に分かれた集団があります。

「メダカ」という魚は、色々な見方ができます。水田のシンボルであり、その水田のかたちが変わってしまうことにより絶滅が危惧されたり(環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類)、その一方で教材や観賞魚として飼育されたりします。

教材や観賞魚としてのメダカは、その多くが「ヒメダカ」と呼ばれる、メラニンの発現のないミナミメダカのことで、人工改良品種です。つまり、野外に放せば、細谷さんもおっしゃった「第3の外来魚」にあてはまります。遺伝子撹乱の問題もあり、野外に放すようなことはしてはいけないのですが、北川さんらが2006-2015年に全国123地点のメダカの遺伝子の分析を行ったところ、48地点からヒメダカに由来する遺伝子が検出されたとのことです。もうこれ以上遺伝的な撹乱を起こさないようにするためにはヒメダカを含む他の地域にすむメダカの野外への流出(メダカの転校)を食い止めることが最優先であり、「メダカ保護」と称してこれ以上ヒメダカや他の地域のメダカを逃がす活動を行わないことが大事といえます。

日本の河川におけるコイ養殖品種の現況 (馬渕浩司さん)

▲河川を悠々と泳ぐニシキゴイ。池の中などなら良いが、野外の川で泳ぐニシキゴイなど、違和感しかない。

コイはもっとも有名な日本産淡水魚類であるといえますが、そのコイもどうやら複数種が知られているようです。山梨県の貢川(くがわ)でのニシキゴイ放流イベントについてはこのブログでも2回ほど触れてきましたが、このニシキゴイは外来コイの改良品種です。

まず、日本にいるコイは2タイプがあり、ひとつはマゴイ、ノゴイと呼ばれる体高が低く細長いタイプの在来個体、もう一つはヤマトゴイなどと呼ばれる体高が高いタイプ、そしてもうひとつ、この2つのタイプの交雑個体。大陸から人為的に入ってきたものも多く、ニシキゴイも日本の細いコイを改良したのではなく、中国のオージャンカラーカープ(瓯江彩鲤)がもとになっているとのことです。

日本では在来個体はほとんど残っておらず、多くの地域で外来コイとの交雑が進んでいます。唯一琵琶湖の深場(や岡山の一部など)にはまだ在来のコイが残っており、ここが日本のコイの最後の聖域といえそうです。また外来のコイは鰓耙が多く、腸が長いのも特徴的だそうで肉食が弱いようです。そのほかの形質としては分岐軟条数については確かにある程度の差があるのですが決定的ではないとのことでした。

池から外来生物のコイをとりのぞくと、珍しいイノカシラフラスコモが復活したなんて事例もあり、このことからもコイがいかに在来生物に大きなダメージがあるかが分かるでしょう。

特定外来生物の解釈とサンシャインバス (曽宮和夫さん)

まずはサンシャインバスとは何ぞや。ストライプトバス(シマスズキ)と、ホワイトバスという特定外来生物同士を交雑させたもの、とのことです。オオクチバスなどのサンフィッシュ科ではなく、スズキ科に近縁なモロネ科の魚です。従来は交雑の品種のものについてはあまり規制していませんでしたが、2012(H24)年以降は交雑種も指定するようにしているとのことです。数がむやみに増えないような交雑ですが、これも何が起こるかわからないという理由からのよう。

なお、演者は環境省の野生生物課の方ということでしたが、魚類学会のサイトでは、別の方のお名前が書かれていました。どうやら「ヒアリ」問題がこんなところにも及んでしまい、変更になってしまったのかもしれません。そのようななか来ていただき感謝です。

よくある質問等

Q1 日本には色々な外来種である熱帯魚が輸入されている。輸入をやめるべきだ。

A1 日本に輸入されていても、それが水槽内であるとか、畑の中であるとか、ビオトープの中などで適正に管理できるような状態でその生物が維持されているのであれば「外来種」とはいいません。トマトやイネなどのものは、人工改良品種の典型的なものですが、それらの農業として栽培される生物も外来生物としてみなすことはしにくいのです。

Q2 キンギョの放流はだめですがサケマスの放流をしているけど、いいの?

A2 食用魚であるサケマスについては、日本でも古くからおこなわれてきました。放流したがるのは、日本人の特徴といえます。さまざまな歴史的背景や第5種漁業権の問題もあり否定しにくい面もあるのですが、冷水病などの病気などもあり、在来のサケなどであっても、放流することはおすすめしません。なおいうまでもなくその水系に生息していない種や個体群を放すのは完全にアウトです。

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